定性派と定量派:液体クロマトグラフィーの使用目的の違いを知り、よりよい運用を目指そう。

液体クロマトグラフィー(以下、液クロ)は、研究・成分分析など、幅広い用途で使用されている分析機器の一つです。

私が所属する食品会社の研究所でも、液クロは数台設置されており、日々様々な分析が行われています。

 

さて、液クロですが、使用目的を大きく2つに分けることができます。

定性定量です。

ざっくり以下のような違いがあります。

定性:あるサンプルの中に、どのような化合物が含まれているか、いるのかいないのか、を調べること。(例:天然物の抽出物に、どのような微量成分が含まれているかを調べる、など)

定量:特定の化合物に着目し、分析するサンプル中に含まれる量を正確に測定すること。算出される数値そのものに重要な意味があることが多い。(例:食品中の栄養成分量の算出、など)

それぞれの細かい定義については、以下のリンクなどを参考にしてください。

https://www.jasco.co.jp/jpn/technique/internet-seminar/hplc/hplc5.html

https://bake-pito.hatenablog.com/entry/2020/08/30/213003

 

さて、多くの人は液クロを、定性or定量のどちらかの目的のみで使用し続けるため、

どちらかの考え方のみが頭に強く刻まれていることが多いです。

そして、使用目的の違いが、液クロの使い方・管理方法などに対する考え方に大きく反映され、

その考え方の違いにより、人間関係のトラブルに発展する場面も見てきました。

 

そのため、片方だけでなく両方の考え方とその違いを理解できれば、

研究室にある液クロの運用・管理に関するトラブルも減り、

研究室の人間関係の改善にもつながるのではなると考えました。

 

そこで今回は、

定性と定量:液クロの使用目的の違いを知り、よりよい運用と人間関係改善を目指そう。

というタイトルで記事を書いていきます。

 

この記事の要点は、以下の通りです。

・定量目的で使用する人は、装置を安定して使うことが目的の一つであり、使用・管理基準が厳しい。

・定性目的の人は、装置が使えるだけで目的が達成できるため、管理にこだわりがないことが多い。

・上記の目的の違いから、装置の使い方をめぐってこの2タイプはもめることが多い気がする。

・両者の考え方の違いを理解できれば、よりよい液クロ運用や人間関係改善につながる。

 

定性と定量:液クロの使用目的の違いを知り、よりよい運用・管理を目指そう。

定量目的で使用する人は、使用・管理基準が厳しい。

定量目的の人は、「分析の結果算出される数値そのものに強い意味がある」と考え、

液クロ分析は、真に近い値を取得する作業」と考えています。

そのため、分析にかかわる一連の作業に起因する誤差をできる限り小さくすることに、ものすごい労力をかけています。

(サンプルの前処理、検量線の作り方、装置のコンディション、使用する試薬のクオリティ、作業者の違い、など)

これら誤差要因の中には、「液クロの使用」も当然含まれているので、

とても厳しい基準で液クロを管理・運用しています。

 

逆に言えば、液クロで何か普段と違うことをされて、液クロの状態を変化させられることに強い抵抗感を持っています。

あまり変なことはしないでほしい。」というのが、この人たちの本音です。

 

確かに、自分以外の誰かが装置に触ったせいで自分の仕事の質が担保できなることは、

液クロに限らず非常にストレスがたまるものであり、私もこの点はよく理解できます。

 

定性目的の人は、装置が使えるだけで目的が達成できるため、管理にこだわりがない。

一方定性目的の人は、「自分のサンプルについて、特定の化合物が含まれているか、何が含まれているか」を調べます。

「分析した波形に特定のピークがいるかいないか」のみに着目しており、その分析の精度にはあまり関心がないことが多いです。

そのため、化合物の含量を正確に再現良く測定したい定量目的の人と比べると、

装置のメンテナンスや日々の安定した使用といった装置の管理にはあまり関心がありません。

定性目的の人は、極端に言えば「分析してデータが見れれば、十分」と考えています。

 

2つの違いを理解し、よりよい液クロ運用や人間関係改善につなげよう。

まとめると、以下のような違いがあります。

定量目的の人:液クロの使用・管理基準が厳しい。安定した使用を邪魔しないでほしい。

定性目的の人:分析ができて、データが見れれば十分。装置管理にはあまり関心がない。

液クロに対して、両者で大きくスタンスが違うことが分かります。

 

そして、ここからが本番です。

この2つの考え方の人が、同じ液クロを使用しなくてはいけないとしましょう。

上記の考え方の違いが、直接ぶつかることになります

絶対もめます…

 

皆様の研究室でも、以下のような不満が出たことはありませんか?

Aさん:含量分析の精度を落とさないために日々管理をしているのに、Bさんが変な条件で分析したせいで安定した分析ができなくなった。もうBさんに液クロは触らせない。

Bさん:抽出物に含まれる成分をざっくり調べたいのに、Aさんの液クロ管理が厳しくてサンプルを打たせてもらえない

 

これらのトラブルは、「定量派」と「定性派」が直接ぶつかっている状況です。

あちこちでこの構図をみたことがあります(笑)

 

それぞれが自分の実験の目的に合わせて同じ装置を使おうとしているだけなので、

どちらがいい・悪いという問題ではありません。

実際、AさんもBさんも自分の実験を進めるために不可欠なことを主張しているので、

どちらかが勝ち・負けるという状況になることは、好ましいことではありません。

 

そのため、私としては

定量派・定性派ともに、お互いの考え方を理解する」しかないと考えています。

具体的には、以下の点については理解してほしいと思います。

・大きく分けて定量派と定性派がいること(意外と理解していない人が多い。)

・定量派の仕事には装置の安定性が不可欠なため、定性派は使い方に少し配慮する。

・定性派の目的を達成するために、定量派はそれを踏まえても安定して使える方法を検討する。

 

お互いの主張をぶつけて不満だけが渦巻くような状況は、好ましくありません。

いったん落ち着いてお互いの目的を理解し、うまく運用できる方法を考えていくことで、

トラブルが起きる可能性を減らし、人間関係の維持にもつなげてほしいものです。

まとめ

・定量目的で使用する人は、装置を安定して使うことが目的の一つであり、使用・管理基準が厳しい。

・定性目的の人は、装置が使えるだけで目的が達成できるため、管理にこだわりがないことが多い。

・上記の目的の違いから、装置の使い方をめぐってこの2タイプはもめることが多い気がする。

・両者の考え方の違いを理解できれば、よりよい液クロ運用や人間関係改善につながる。

 

大げさではなく、液クロの使い方をきっかけに人間関係にひびが入ったケースをよく見てきました。

人によって使用目的(定量定性)が違うこと、

それぞれの状況を理解して一緒に協力していくこと。

ぜひ多くの方にお願いしたいと思います。

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