社会人博士体験談!投稿論文を出したいが、会社の意向との板挟みに悩む。

前回の記事では、

会社の業務に時間をとられて社会人博士の研究に時間が割けないということに悩み、

その解決策として、

社会人博士の研究がいかに会社のためになるものかを上長へ説明し、

業務時間中に社会人博士関連の仕事を行う許可をもらうことで、

時間を捻出しました。

 

まだ読んでいない方は、ぜひ以下からご覧ください。

https://researcherinacompany.com/doctor-course-3/
https://researcherinacompany.com/doctor-course-4/
https://researcherinacompany.com/doctor-course-5/

 

今回は第4弾として、

社会人博士経験談パート4:投稿論文でもひと苦労:会社との戦い

という内容で記事を書いていきます。

社会人博士卒業に必要な査読付き英語論文の投稿について、

会社員ならではの苦労を経験したので、ご紹介します。

 

ポイントは、以下の内容です。

・論文を出すにあたって会社の承認が必要。

・論文の内容に、会社の意向を反映させなくてはいけないこともある。

・会社の承認に数か月かかり、かなり焦った。

・論文投稿については、早めに会社と情報共有をしたほうがよい。

・無事に受理・公開されるまで、会社からのプレッシャーがあり気が抜けない。

 

少しでも参考になることがあれば幸いです。

 

社会人博士経験談パート4:論文投稿について会社の承認を得る

論文を出すにあたって会社の承認が必要

少なくとも私が所属している会社では、

学術論文を投稿する際には事前に会社の承認を得る必要があります。

 

論文のドラフトと申請書を添付し、

部長たちから承認を得たうえで投稿できるようになります。

社会人博士の研究とは言え、会社員として行っている研究でもあり、

研究成果は基本的に会社にも帰属します。

 

そのため、会社のプレスリリースなどと同じように

どのような情報が一般に公開されるかを事前に会社と共有することが、

論文投稿における最初のプロセスでした。

論文投稿直前になって、会社から指摘が入ってくる。

私の場合、

社会人博士の研究遂行は、ほとんど研究室のボスや指導教員と行っていました。

 

会社との方向性の共有は

最初のテーマ設定こそ上司や上長と相談して決めましたが、

その後はデータや進捗を課長と共有する程度でした。

上長が、「社会人博士の研究は、基本的に研究室の方向性に任せる」

という方針だったので、その通りに進めていました。

 

さて、データがそろってさあ論文を仕上げようという段階になり、

改めて会社に「論文を投稿する旨」を伝えました。

 

研究室のボスや指導教官と論文を仕上げ、

ドラフトを添付して会社へ承認申請しました。

 

そして、ここからが困難の始まりです。

承認権限のある部長クラスから、無数のコメントと指示が飛んできました

 

具体的にはお示しできませんが、

内容のほとんどは

「この文章やストーリーでは、うち製品の独自の優位性がよくわからない

「はっきり言えないのかもしれないが、有効性をもっと主張してくれ」など、

会社にとってのメリットが分かるような論文に仕上げなさい

という指示でした。

 

その当時、所属する会社の理科系部門の部長に研究所出身の人はおらず、

論文執筆経験のある人は一人もいませんでした。

 

部長たちは、

学術論文は自社の成果をアピールするもの

だと理解していたようで、

そのような側面をもっと押し出してほしいという意向があったようです。

 

さて、とはいえ学術論文ですので、データから示せないことは主張できません。

部長たちの意向を研究室のボスや指導教官へもっていき、

データから示せる範囲の表現で修正していきました。

(もう査読やん!) 

 

修正しては会社へ提出し、また返却されては修正しを繰り返していたら、

結局、この問題を解決するためだけに3か月近くを要してしまいました…

1回分の査読をやり終えたくらいの気持ちでした。

 

一般的に投稿論文を出す場合は、

事前に共同研究者のチェックを受けて

その内容を踏まえて修正することが多いです。

 

しかし企業では、

研究とは直接かかわりがない人たち(私の場合は部長クラス)の意向も

反映しなくてはいけないケースがあります。

 

研究者のマインド会社の意向

この2つの間でかなり揺れ動かされましたね。

 

このように、

論文投稿前に会社の承認が必要な場合、その対応に結構な期間を奪われる

可能性があります。

 

博士課程3年を考えると、こんなところであまり時間をとりたくありません。

3年生になってからだとかなり焦るので、

ぜひ事前に会社とすり合わせを行うことをお勧めします。

受理・公開されるまで、いろいろな理由から気が抜けない。

さて、準備ができた論文を投稿し、査読を受けます。

論文執筆経験者はご存じの通り、査読期間はケースバイケースです。

一瞬で終わることもあれば、年単位のこともありますし、

査読期間を事前に見積もることはほぼ困難です。

 

しかし、会社はスピード感と見通しを執拗に求めてきます。

 

「受理の見込みはあるのか」

「いつ受理されるのか」

「いつ公開されるのか」

部長たち研究内容と関連する部署などからは、

このような問い合わせが頻繁に来ました。

(わからない、で通すしかないんですが…)

 

特に、会社の大きなプロジェクトにかかわっている研究では、

論文投稿と並行して製品開発や販売準備をしているケースもあり、

計画通り進むように、細心の注意を払っています。

 

このように、

ただ論文受理するだけでなく、

それに付随する会社の仕事も背負っていることもあり、

受理・公開されるまで本当にひやひやします

 

結果的に社会人博士修了用の論文は、

厳しい査読はなく投稿から数か月で受理されましたが、

今後論文投稿をする際に同じような思いをすると想像すると、

今でも胃が痛くなりますね。

まとめ

・論文を出すにあたって会社の承認が必要。

・論文の内容に、会社の意向を反映させなくてはいけないこともある。

・会社の承認に数か月かかり、かなり焦った。

・論文投稿に関しても、早めに会社と情報共有をしたほうがよい。

・無事に受理・公開されるまで、会社からのプレッシャーがあり気が抜けない。

 

博士課程修了のための研究とは言いつつも、

会社員として研究活動をしている以上、

その成果は会社の成果としても扱われます。

 

自分の研究の質を高めて世に出していきたいという思いと、

会社のメリットとなる研究成果を出さなくてはいけないという会社からの圧力。

 

社会人博士に限らず、

企業研究員の方が論文を書く際にはこの葛藤が必ずあります。

 

確かにこの葛藤を持ち続けることは精神的につらい時もありますが、

それでも私は、

企業研究員もチャンスがあれば論文執筆はしたほうが良い

と考えています。

研究員として生きるのであれば、論文は自分のキャリアを支えてくれるはずです。

https://researcherinacompany.com/research-paper/

次回は、

中間審査や博士論文審査会など、大学内の修了要件に関することを書いていきます。

次回こそ本当に最後にします。

 

研究職と博士号に関する記事はこちら

研究職と博士号




社会人博士経験談!会社と大学院を両立するために、博士の研究を業務に組み込んでもらう。

 

前回の記事では、

大学との共同研究をきっかけに社会人博士進学の準備を始め、

会社の説得や入試で苦労した点についてお話ししました。

前回の記事をまだ見ていない方は、こちらをご覧ください。

https://researcherinacompany.com/doctor-course-3/
https://researcherinacompany.com/doctor-course-4/

 

今回は第3弾として、

社会人博士経験談パート3:会社の仕事と大学院の両立

という内容で記事を書いていきます。

 

私は、以下のような点を工夫しました。

・大学院や研究科によって修了要件が異なり、大変さが全く異なる。

・会社の仕事に博士の研究が追加されると、時間が足りない。

・博士の研究を会社業務の一つとして認めてもらうように努力してみるとよい。

・会社から認めてもらえれば、時間に余裕が出てくる。

 

少しでも参考になることがあれば幸いです。

社会人博士経験談パート3:会社の仕事と大学院の両立

大学院や研究科によって修了要件が異なる。

多くの方がご存じの通り、

博士後期課程の修了要件は、大学院や研究科によって全く異なります。

例として、私が修了した大学院と出身大学の博士課程を比較してみます。

 

〇私が修了した大学院

・研究実施講習への出席(毎年1回)

・査読付き英文雑誌の筆頭論文1報

・博士論文の提出と合格

・中間審査会(D2)と博士論文審査会の合格

 

〇出身大学の博士課程

・研究実施講習への出席(毎年1回)

・講義10単位(すべてレポート提出)

・研究科主催の論文ゼミ(D1時、月1回)

・国際学会での口頭発表1回

・査読付き英文雑誌の筆頭論文1報

・博士論文の提出と合格

・中間審査会(D1、D2)と博士論文審査会の合格

 

全く違いますね。

そもそも、所属先ごとにこれだけ修了要件が違うことに、改めて驚きます。

 

そして、特に社会人博士にとっては、

修了要件がどのくらい厳しく大変なものであるかは、

仕事などとの両立を考えるうえで非常に重要です。

 

会社の仕事にそのまま博士の研究が追加されると、時間が足りない。

ほとんどの社会人博士学生は、

大学院の研究とは別に、普段会社でも仕事をしています。

 

研究活動だけに自分のすべての時間を割けるわけではなく、

使える時間が限られています。

家族がいたり、大学と自宅が離れているなどのケースでは、

もっと時間が限られてくるでしょう。

 

社会人博士は単純に時間が足りません。

 

私の場合、おそらく修了要件はかなり優しい部類に入るものでしたが、

それでも入学直後から、「研究できる時間が足りない」と感じていました。

会社の仕事をしなくてはならず研究室へ行けない日々が続くと、

「このままじゃ修了に間に合わないんじゃないか?」

という焦りが出てきました。

 

本当は研究室に行きたいけれども、

我慢して会社で業務をこなすことも増えており、

何とかして研究室へ行く時間を確保しなくてはと感じるようになりました。

 

そこで、課長や所長へ相談を持ち掛けました。

博士の研究を会社業務の一つとして認めてもらう

前回の記事にも記載しましたが、

私の場合、社会人博士の進学先はもともと共同研究をしていた研究室であり、

博士課程の研究内容もこの共同研究を起点にしたものでした。

 

しかし会社からは、

共同研究は会社としての業務

社会人博士は個人のスキルアップ

という形で、それぞれ別の取り組みとして認識されており、

業務中に社会人博士に関する作業はできず、業務外時間で行っていました

 

しかし、共同研究の内容と社会人博士の研究テーマは本質的に同じものであり、

社会人博士の研究成果は同時に共同研究の成果として扱ってもよいのでは?

と考えました。

 

そこで、

社会人博士の研究を業務の一つとして扱ってほしい

業務時間中にも、社会人博士にかかわる作業をやらせてほしい」と

課長と研究所長に交渉し、何とかOKをもらうことができました。

  

認められた理由は、以下のようなものだったようです、

・共同研究内容と社会人博士の研究テーマが非常に近い

・社会人博士の研究テーマがうまくいけば、会社の利益になる可能性がある。

 

これにより私は、研究室へ行けたときに実験に割ける時間が増え、

データをとるスピードを上げることができました。

 

私のように、社会人博士の研究テーマが会社の利益につながるものであれば、

会社業務に「社会人博士の修了につながる作業」を盛り込んでもらうことで、

業務中に論文執筆やプレゼン準備などの作業ができ、

時間に余裕が出てくると思います。

 

 

まとめ

・大学院や研究科によって修了要件が異なり、大変さが全く異なる。

・会社の仕事に博士の研究が追加されると、時間が足りない。

・早い段階で、博士の研究を会社業務の一つとして認めてもらう。

・会社から認めてもらえれば、時間に余裕が出てくる。

 

会社の仕事に博士の研究が入ってくると単純に忙しく時間が無くなります。

博士の研究を会社の仕事の一つとして認めてもらうよううまく会社に働きかけ、

業務中に博士の研究時間を確保することで時間の余裕を生み出していました。

 

心身ともに追い込まれることなく、

楽しく研究をして博士号をとれるようにするために、

できる限りの工夫をすることをお勧めします。

 

次回はいよいよ、投稿論文における会社との戦いについて書いていきます。

興味のある方は引き続きご覧ください。

 

研究職と博士号に関する記事はこちら

研究職と博士号




社会人博士体験談!会社の許可を得る交渉と入試での苦労

この記事のポイント

・社会人博士進学についての会社の説得は、どこで躓くか分からない。

・社会人博士の研究を「会社の仕事の一つ」として認めてもらうとよい。

・「社会人取得により会社にもたらすメリット」を自分の中で整理しておくとよい。

・進学先の先生からの推奨をもらっていると、許可が下りやすいかもしれない。

・入試の準備は余裕をもって。学生時代の研究内容の場合十分に復習を。

 

前回の記事では、

大学との共同研究をきっかけに

社会人博士進学の準備を始めた頃までお話ししました。

前回の記事をまだ見ていない方は、こちらをご覧ください。

https://researcherinacompany.com/doctor-course-3/

 

今回は第2弾として、

社会人博士経験談パート2:会社の説得と入試準備

という内容で記事を書いていきます。

 

私は、以下のような点で苦労しました。

・研究所長と本部長の仲が良くなく、許可取得がなかなか進まない。

・「社会人博士取得により会社にもたらされるメリット」を会社に示す。

・入試で行う研究プレゼンの準備。

 

社会人博士進学が決まる経緯から博士号取得までを、時間軸に合わせて書くので、

少しでも参考になることがあれば幸いです。

 

社会人博士経験談パート2:会社の説得と入試準備

会社との交渉

まずは、進学許可を得るための会社との交渉です。

手順としては、以下の通りです。

①自分の上長(課長、研究所長)を説得し

②研究所長から本部長と常務へ説明してもらい許可をいただく

 

まず、①課長、研究所長の説得ですが、

こちらはあっさりと許可をもらいました。

 

許可いただけた理由としては、以下のようなものがあったようです。

・共同研究でデータが出ており、この業績で博士号をとれるなら労力が少ない。

・労力が少ないので、仕事への影響も小さいと判断された。

・課長も研究所長も博士号持ちで、博士号取得の仕事上のメリットを知っている。

・研究室のボスから推薦をもらっている(メールで直接推薦してもらった。)

 

しかし、ここから先で苦労しました。

 

②研究所長から本部長への交渉がなかなか進みません。

その理由は以下のようなものでした。

・研究所長と本部長の仲が良くなく、コミュニケーションが少ない。

・そのため、少し話すだけで終わるような話もなかなか進まない。

 

社会人博士進学のため願書の提出が1月末締め切りで、課長と研究所長の許可は11月末の時点で得ていました。

しかし、願書締め切り前日まで許可の連絡が届きません。

 

何度も研究所長へリマインドメールを送り、

願書の執筆も済ませ、ただひたすら許可の連絡を増しました。

やっと許可が下りたのは、なんと願書締め切り日の3時間前でした。

 

誰かが私の進学を嫌がっているのではないかとすら思っていましたが、何とか会社から進学許可をもらうことができました。

 

ただし、進学に合わせて本部長から一つ課題を与えられました。

社会人進学が会社にもたらすメリットを説明する。

本部長から与えられた課題は、

社会人博士取得により会社にもたらされるメリット

を会社に示すことでした。

 

困惑しました。

正直なところ、社会人博士への進学は自分が博士号を取得することが目的で、

自分自身のキャリア形成のためとしか考えていませんでした。

 

また、研究成果を会社事業へ活かすことも大きなメリットではありますが、

それは共同研究によって得られるものであり、

個人の博士号取得によるものではありません。

 

共同研究と個人の博士取得。

この2つを区別したうえで、個人の博士取得が会社にもたらすメリットを具体的に説明するのに、私はかなり頭を痛めました。

 

いろいろ悩んだ末に、以下のような提案をして納得してもらいました。

・博士号取得のプロセスを通して、研究遂行に必要な能力を身に着けられる。

・この能力は、会社の後輩や部下を研究者として育成する際に不可欠。

・博士号取得により海外の研究者とのコミュニケーションがとりやすくなる。

・博士号取得者が増えることで、研究開発へ力を入れているというイメージの獲得につながる。

・博士を取得できる見込みがあると、研究室のボスが推薦している。

 

実際の文書にはより細かく記載していますが、

大きくは上記の内容を書きました。

この内容を研究所長から本部長へ回してもらい、何

とか納得してもらうことができました。

 

ただ後日、本部長と直接話した際には、

先生からの推薦もらってると断れないよね…」と話しており、

先生からの推薦は効果抜群のようです。

 

社会人博士を希望される方は、

進学予定先の先生などの推薦を事前に取り付けて、

そのことを会社に伝えておく

進学許可が下りる可能性が上がるかもしれません。

 

入試の準備

会社の許可をとって大学へ願書を提出し、面接までの準備に入ります。

面接は、研究紹介と質疑応答です。

そこで、これまで共同研究で行ってきた研究の進捗を説明し、

今後の展望を含めてプレゼンをすればよいかと考えていました。

 

しかし、募集要項を見て愕然とします。

修士課程の研究内容を説明し、質疑応答を行う

この結果、

何年も前の修士課程の研究を復習し、

完璧に仕上げるというタスクが発生しました…。

 

大学院卒業以降ほとんど見たことがなかった過去の資料を引っ張り出して当時の研究データを復習するだけでなく、

私の修了以降に出版された関連論文に一通り目を通し、

自分の研究の位置づけとその後の発展内容について、頭の中に叩き込みました。

 

整理した状況をもとに自分の修士論文発表会の発表資料を作り直し、発表練習も行いました。

 

本番までの1か月間、平日の昼と土曜日は会社の仕事や大学での研究を行い

平日の夜と日曜日は面接対策に充てていました。

今思えば、あの当時は非常に苦労しました。

 

そして何とか本番の面接を無事に終え、

合格し進学を果たすことができました。

 

入試の準備は、会社の業務や研究とは別の時間で行わなくてはいけません。

当時は独身で時間を十分に確保できたため1か月で間に合いましたが、

できれば早い段階から準備を進めておくことをお勧めします。

まとめ

・社会人博士進学についての会社の説得は、どこで躓くか分からない。

・社会人博士の研究を「会社の仕事の一つ」として認めてもらうとよい。

・「社会人取得により会社にもたらすメリット」を自分の中で整理しておくとよい。

・進学先の先生からの推奨をもらっていると、許可が下りやすいかもしれない。

・入試の準備は余裕をもって。学生時代の研究内容の場合十分に復習を。

 

社内の説得や入試準備でもそれぞれ躓くことがあると思うので、

準備は時間的な余裕をもって行う方がよいでしょう。

 

次回は、進学後の研究と仕事の両立について書いていきます。

社会人博士を希望されている方の、少しでも参考になれば幸いです。

次の記事はこちら

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研究職の転職が気になる方へ

本ブログ運営者のとうやは、研究職→研究職の転職に成功しています。

概要は以下の記事を参照ください!

↓ 

研究職の私の転職活動:内定を得ました!




社会人博士体験談!会社や大学の推薦・許可を得た経緯について解説。

この記事のポイント

・大学との共同研究は、社会人博士進学のきっかけになりやすい。

・大学の研究室で自分でデータをとり、論文を書ける環境が望ましい。

・論文が書けそうなデータをもとに、研究室のボスから進学許可をもらう。

 

現在私は、食品企業の研究職として働いていますが、

入社後に行った大学との共同研究をきっかけに社会人博士課程に進学し、

博士号を取得することができました。

 

入社後に社会人博士を取得した方はそれなりにいらっしゃるようで、

実際、様々な方が社会人博士取得の経緯、苦労したこと、

メリットデメリットについて

ブログや記事などにまとめてくれています。

(勝手ながら、いくつか紹介させていただきます)↓

Akira Tanimotoさんの記事

(同じような経験者の記事へのリンクを多数貼ってくれている。)

シャープの研究員の方の記事

 

このような記事を見ると、

ひと口に社会人博士といっても一人一人状況が全く異なり、

それぞれ違ったことに悩みながら、

社会人博士課程を修了していることが分かります。

 

企業研究職で博士号取得を希望されている方は、

実際に取得した方の体験談を読んだり聞いたりすることで、

ご自身がどのように行動すれば博士を取得できるか、

イメージしやすくなるのではと思います。

 

そこで、私の社会人博士取得体験について記事することによって、

社会人博士を検討している企業研究者の方の

お役に立てるのではないかと考えました。

 

そこで、

私が社会人博士課程に進学した経緯や

どのように研究と仕事を両立しながら博士号を取得したかについて、

連載記事の形でまとめることにしました。

 

今回はその第一弾として、

社会人博士経験談パート1:食品企業入社から社会人博士進学までの経緯

という内容で記事を書いていきます。

 

私の経験上、以下のような状況が社会人進学に大きく影響しました。

・大学との共同研究は、社会人博士進学のきっかけになりやすい。

・大学の研究室で自分でデータをとり、論文を書ける環境が望ましい。

・論文が書けそうなデータをもとに、研究室のボスから進学許可をもらう。

 

少しでも参考になることがあれば幸いです。

社会人博士経験談パート1:社会人博士進学までの経緯

入社から研究所への異動まで

生命科学系学部の修士課程を修了し、

新卒採用で現在所属する食品会社へ就職しました。

 

新入社員研修後は地方の食品製造工場へ配属され、

生産管理担当として数年間働きました。

 

仕事は特に大きなトラブル等はなく過ごしましたが、

現場の人と会話内容が合わず、人間関係を作るのに疲れる

生産管理の仕事、自分はやりがいや楽しさを感じない

という漠然とした不安や不満を感じていました。

 

そんな中、自分も予期せぬタイミングで研究所への異動を命じられます。

 

もしかしたら、不安や不満が顔に出ていて、

「こいつは工場から異動させた方がいい」

と上司に思われていたのかもしれません。

 

大学との共同研究の主担当に任命される

研究所異動直後は、研究所業務の研修を受けていましたが、

数か月後に、ある大学との共同研究の主担当に任命されます。

その内容は、大学の設備を借りて自分で実験してデータをとる

というものでした。

 

久しく自分で実験をしていなかったこと、

共同研究の内容が大学院時代の研究内容と全く異なっていたこともあり、

任命直後は不安しかありませんでした。

 

しかし、いろいろ考えた末、このチャンスはめったにないと腹をくくり

大学の設備を使い倒し、意地でも結果を出す」 と心の中に誓いました。

週6日以上は研究室へ行き、実験データをとり続ける日々

実際に共同研究が開始してからは、

週6日以上は大学の研究室に出向き、実験に没頭しました。

研究室の進捗報告にも毎回出席し、

データの共有やディスカッションに参加しました。

 

当初会社からは「大学へ行くのは週3回前後で」と言われていましたが、

気づいたらそういわれていたことも忘れ、

ほぼ毎日(土日含む)大学へ行っていました。

 

めぼしいデータが出るまでの1年間もかかりましたが、

研究に没頭するほど研究が楽しくて仕方なく、あっという間に過ぎていました。

 

そして、データが出始めたころ、あることに気づきます。

この研究、うまくいったら論文書けるんじゃないか?

論文書けるなら、博士取得の道もあるんじゃないか?

会社研究所の重役は博士持ってるから、今後のことを考えても博士はあった方がいいかも

 

そして、そのためには研究室のボスの推薦をもらうのが手っ取り早いと考え

社会人博士進学に向けた行動を開始します。

研究室のボスから博士進学の推薦をもらう

社会人博士進学を実現するために、

まずは研究室のボスの許可をとることにしました。

 

アピールポイントは以下の2つです。

・論文を書けるようなデータが取れてきていること。

・研究をさらに発展すべく、会社との共同研究も継続する(=研究費を支払う)。

 

論文という形で研究室の業績に貢献し、

会社から研究費を入れてさらに研究を発展させる。

この2点をもってアピールし、進学許可をもらいました。

 

後で聞いた話ですが、普段の研究の様子や進捗報告を受ける中で

「こいつは社会人博士に進学させてもいいかも」と思っていたらしいです。

 

このような形で、研究室のボスから社会人博士への進学許可をいただきました。

ボスからの許可は、会社を説得するにあたって非常に大きな材料となります。

詳しくは次回に書きます。

 

まとめ

・大学との共同研究は、社会人博士進学のきっかけになりやすい。

・大学の研究室で自分でデータをとり、論文を書ける環境が望ましい。

・論文が書けそうなデータをもとに、研究室のボスから進学許可をもらう。

 

次は、会社の説得と入学試験について書いていきます。

興味のある方は引き続きご覧ください。

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研究職の転職が気になる方へ

本ブログ運営者のとうやは、研究職→研究職の転職に成功しています。

概要は以下の記事を参照ください!

↓ 

研究職の私の転職活動:内定を得ました!




【事例紹介】アカデミアから民間企業へ転職した博士研究員

現在私が所属している食品会社では、

研究職・開発職の社員のほぼすべてが、新卒で採用された社員です。

 

ほとんどが修士課程卒業の理系枠で採用された人たちで構成されており、

博士号持ちの社員は非常に少なく、

それも入社後に取得した人がほとんどです。(私もこのパターン)

 

一方で、博士取得後しばらくアカデミアで働いたのち、

研究職として民間企業へ中途入社する方もいらっしゃいます。

 

私が直接かかわった人としては、

民間企業のオファーを受けて転職したポスドクの方や

私の会社に中途入社してきた元助教の方

などがいらっしゃいました。

 

そのような方と話を聞くと、

自分の経験を何とか企業研究に落とし込んで働いているものの

アカデミア在籍時のイメージと実際の企業研究のギャップなど、

いろいろなことに悩みながら働いているようです。

 

今回は、

ポスドクの転職:アカデミアから民間企業へ転職した研究員

について、紹介します。

 

ポスドクから民間へ転職してきた研究員の事例

今回紹介する事例について

今回は、2名の方について紹介します。

詳細に書くと個人情報的に問題があるので、ある程度ぼかした情報になりますが、ご了承ください。

なお紹介する2名は、

博士取得後しばらくポスドクなどをした後に転職してきたという点、しか共通点はなく、

入社時期、研究分野、年齢等も全く異なります。

 

事例1:就職後、全然違う仕事に割り当てられたAさん

Aさん、生命科学系の基礎研究で博士号をとり、

そのまま助教として働いたのちに私の所属会社に転職してきました。

 

転職のきっかけは、

会社が、ある新規プロジェクトの分野に明るい専門家を探しており、

その方がリストアップされオファーをしたことがきっかけだったようです。

 

中途入社直後から、その方は新規プロジェクトサブリーダー的ポジションとして働き始めました。

部下も数人持ち、約1年半研究開発活動をつづけました。

 

しかし2年後、社内政治的な事情によりそのプロジェクトが終了することになりました。

その方は、終了決定後約1年でプロジェクトをクローズさせる仕事を行い、

その後、同じ研究部門内の分野が違う部署へ異動しました。

 

この異動は、特に専門性を考慮されたわけではなく、

新卒採用の社員と同じような扱いとしての異動だったそうです。

 

中途入社時にはその専門性に期待されて入社したにもかかわらず、

わずか数年後にはその話がすべてなくなってしまうという、残念な状況となりました。

 

その方は自身の専門分野で仕事をしたいという気持ちが強かったため、

プロジェクト終了が決まった直後は転職もかなり検討したそうですが、

様々な事情を考慮して異動を受け入れたそうです。

 

異動先の仕事も楽しんでやれているとは言っていますが、

「いったい自分には何が期待されているかよくわからないんだよね…」

と、不安や不満に感じていることがまだあるようです。

 

また、

・専門性で採用されたのに、結局会社事情で異動させられてしまうこと。

・こんなに短期間で結果を求められると、本質的で質の高い研究はできない。

・このような異動が行われている限り、社内で専門性の高い貴重な研究者は育たない。

 

ということを非常に懸念しているようでした。

いつか異動させられるかと思うと、今の仕事に本気になれないときがあるようで、

今もジレンマを感じながら、仕事をしていらっしゃるようです。

 

事例2:アカデミアで培ったスキルを存分に活かしているBさん

最初の方は、アカデミア時代に身に着けたスキルを比較的活かせているタイプです。

Bさんは、バイオインフォマティクス系のラボで博士をとり、

その後ラボへ移ってポスドクとして働いていました。

 

バイオインフォマティクスという分野は、

食品をはじめ様々なメーカーや企業で専門家が不足している分野です。

その方のラボは、企業の間でも比較的有名だったようで、

企業からの共同研究の申し込みが絶えないような研究室だったそうです。

 

そのため、その方も企業との研究に慣れているだけでなく、

いろいろな企業の考え方や進め方に触れることができていたようです。

こういう経験ができたのは転職活動でも役に立ったということを、

後々この方はおっしゃっていました。

 

さて、この方は、バイオインフォマティクスの専門家として転職活動を行い、

ある食品会社に転職しました。

 

面接の際に、

バイオインフォマティクスやデータサイエンスの仕事を任せる

とはっきり言われるなど、ほぼ専門職として採用されたようです。

採用後は研究部門に配属され、データサイエンスの仕事を中心に行っています。

 

この方のケースでは、

人材が不足している分野の専門家という長所を利点を存分に活かし、

専門性の高いポジションへ転職できました

 

もし、自分の専門性が企業にとって希少価値の高いものであれば、

その専門性を武器に民間企業への転職を実現できるかもしれません。

 

しかし、この方は入社後にいくつかジレンマを感じているようで、

・データサイエンスの過程に興味がなく、解析結果ではなく結論を急かしてくる人が多い。

・インフォマティシャンは何でもできると思っている人が多い。

と嘆いていました。

 

まとめ

・バイオインフォマティクスなど、企業にとって希少価値の高い分野の専門家は、

その専門性を活かした民間企業への転職が実現しやすいかもしれない。

・採用時にはその人の専門性に期待していても、その後のプロジェクト終了などによって

専門以外の仕事に割り当てられてしまうこともあり得る。

・一度企業に入ってしまうと、新卒採用の人と同じ扱いや人事異動を受けてしまうこともある。

 

アカデミアを生き抜いて身に着けてきた専門性など能力が、

民間企業のニーズと合致すれば転職においてとても有利ですが

そのニーズがずっと続くとは限りません。

 

もし企業研究員として活きていくのであれば

専門性という武器を持ちつつも、プロジェクト終了などの会社に意向に従う必要があります。

 

企業のロジックで働くことは、アカデミアのお仕事とはまた違うことが多いようです。

 

大学院卒の強みを生かした転職に特化した

アカリクキャリア」というサービスがあります。

興味がある方はぜひのぞいてみてください。

会員登録は無料ですので、登録しておくだけでも良いと思います。

アカリクキャリア

研究職も転職できる

著者は昨年、研究職→研究職の転職を実現しました。

 

今回の記事を読んで、環境を変えることを検討してもよいなと感じた方は、

私の転職体験談と、以下の記事をぜひ読んでみてください。

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