栄養成分やその代謝物が、体内での免疫機構に大きく関わっているということは報告がたくさんあり、一部研究はガン免疫の有効性に栄養成分が関与していることが示唆されています。
今回は、栄養成分やその代謝物による、ガン免疫への影響を評価した基礎研究の論文を紹介します。
※本ブログは、直近1年程度に出版された論文の中から、著者が独断と偏見で選択した論文を紹介しています。*ほかにも似た論文はたくさん出ていますが、ご容赦ください。
栄養成分とがん免疫に関する基礎研究論文4報
アミノ酸代謝産物グルタル酸の抗腫瘍作用 Nature Metabolism
アミノ酸代謝で産生されるグルタル酸が、T細胞の代謝制御を介してCD8+への分化を誘導して、腫瘍免疫を高めるという論文。
タイトルは、
Glutarate regulates T cell metabolism and anti-tumour immunity
動物試験ではグルタル酸塩投与での有効性も確認しています。
論文リンクはこちら↓
https://www.nature.com/articles/s42255-023-00855-2
アスパラギン酸摂取を控えることがガン免疫と関連? Nature Metabolism
アスパラギン摂取を制限することで、分化中のCD8T細胞の増殖力とエフェクター機能を高め、結果的にガン免疫を向上させることを明らかにした論文。
タイトルは
Asparagine restriction enhances CD8+ T cell metabolic fitness and antitumoral functionality through an NRF2-dependent stress response
一方で、CD8T活性化直後のアスパラギン制限は機能向上にはつながらないとのこと。
論文リンクはこちら↓
https://www.nature.com/articles/s42255-023-00856-1
トランス脂肪酸がむしろ抗腫瘍に寄与する? Nature
トランス脂肪酸がCD8T細胞のGPR43へ作用して短鎖脂肪酸由来の活性を抑え、抗腫瘍免疫を活性化させるという論文。
タイトルは
Trans-vaccenic acid reprograms CD8+ T cells and anti-tumour immunity
論文では動物とヒト由来細胞の結果がメインで、今後続報が出てくるか気になります。 栄養学で基本悪者とされるトランス脂肪酸でも、その生理活性は多様のようです。
論文リンクはこちら↓
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06749-3
ビタミンDがガン免疫の有効性向上に寄与する? Science
ビタミンDがガン免疫の有効性向上に寄与していることを示した論文。
タイトルは
Vitamin D regulates microbiome-dependent cancer immunity
ヒトのおいてもビタミンDとガン免疫療法の予後に関連が見られ、この作用には腸内細菌叢の働きが重要であるとのこと。
論文リンクはこちら↓
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adh7954
終わりに
栄養成分とガン免疫に関する基礎研究を4本紹介しましたが、実際にヒトでどうかはまだ不明な点が多いと思います。
特定の栄養成分でガンに対する免疫が大きく変わるわけではないと思いますので、その点ご注意ください。
それも踏まえて、今後も栄養成分とガン免疫との関連は紹介していきたいと思います。
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