この記事では2024年5月中旬~6月上旬に出版された最新論文を4報紹介します。
タイトルにある「腸内細菌が性ホルモンを作っている」という衝撃的な論文に加えて、食品・栄養学に関する論文も2報紹介します。
※本ブログは、直近で出版された論文の中から、著者が独断と偏見で選択した論文を紹介しています。
2024年6月5日:最新論文4報
腸内細菌が性ホルモンプロゲスチンを合成している! Cell
腸内細菌2種が、水素ガスを使って腸管内でコルチコイドを性ホルモンであるプロゲスチンへ変換することを明らかにし、妊娠中の体内濃度に影響する可能性を示した論文。
タイトルは、
Gut bacteria convert glucocorticoids into progestins in the presence of hydrogen gas
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0092867424005142
過去の論文で、腸内細菌の一部がエストラジオールやテストステロンを分解してしまい、それに伴い性ホルモンに依存する恒常性維持が難しくなり、うつ症状の発症につながるという論文がありました。
しかしこの論文では、一般的に妊娠期に体内で上昇するホルモンであるプロゲスチンが、なんと腸内のコルチコイドから作られおり、しかも体内濃度にも影響することを示唆しています。
妊娠後期女性の糞便で、プロゲスチン濃度とこの代謝遺伝子を持つ細菌の割合が増加していたとのこと。
結腸の内分泌細胞が、過食や肥満を調節している? Nature Metabolism
結腸の内分泌細胞が欠損させると、過食と肥満が誘導されることを明らかにした動物試験の論文。
タイトルは
Interaction between the gut microbiota and colonic enteroendocrine cells regulates host metabolism
https://www.nature.com/articles/s42255-024-01044-5
論文によると、小腸の内分泌細胞の研究は非常に多い一方で、大腸の内分泌細胞はほとんど研究がされていなかったとのこと。
実験では、内分泌細胞欠損により腸内微生物叢が変化し、微生物により結腸管内で過剰に作られたグルタミン酸がこのマウスの食欲増進を誘導したことを報告しています。
クルクミンが非アルコール性肝炎を改善するか:ヒト介入試験 American Journal of Clinical Nutrition
ターメリックやウコンに豊富に含まれているポリフェノールの一種クルクミン。
このクルクミン摂取が、非アルコール性脂肪肝を改善することを調べ、そのメカニズムに迫ったヒト介入試験。
タイトルは
Curcumin supplementation alleviates hepatic fat content associated with modulation of gut microbiota-dependent bile acid metabolism in patients with non-alcoholic simple fatty liver disease: a randomized controlled trial
https://ajcn.nutrition.org/article/S0002-9165(24)00482-9/abstract
24週間500mg/dayの摂取で肝臓脂肪指標だけでなく、各種代謝マーカー(遊離脂肪酸、中性脂肪、空腹時血糖、HbA1c、インスリン)が改善したことを確認しています。かなり強力な結果が出ています。
さらにそのメカニズムにも踏み込み、意外にも腸内細菌Bacteroidesの増加と腸内細菌が分泌するデオキシコール酸の増加にあると考察しています。
朝食や夕食の欠食は、むしろ肥満につながるかも? American Journal of Clinical Nutrition
朝食or夕食を抜く習慣がある人は、そうでない人と比べて体重やウェストサイズの推移が異なるかを調べた中国のコホート研究。
タイトルは
Longitudinal associations of skipping breakfast and night eating with 4-year changes in weight and waist circumference among Chinese adults
https://ajcn.nutrition.org/article/S0002-9165(24)00515-X/abstract
通常、欠食がある人は摂取カロリーが低くなる傾向があると考えられ、カロリー基準で考えれば太りやすいというイメージはわかないかもしれません。
しかし、このコホート研究では、朝食もしくは夕食の欠食が頻繁にある人は、追跡4年間において体重やウエストの増加が早かったそうです。そしてこの結果は、食事の質やエネルギー摂取量で調整しても変わらなかったとのこと。
食事データや食事の質、・摂取エネルギーの調整方法などが気になりますが、欠食習慣が何らかの形で肥満につながるリスクがあることは覚えておいてもいいかもしれません。
終わりに
今回は、性ホルモンを合成する腸内細菌の話、結腸内分泌細胞の役割、クルクミンのヒト有効性試験、および欠食習慣と肥満の関連を調べたコホート研究を紹介しました。
特に性ホルモンの論文は個人的にかなり衝撃的だったので、今後も続報を待とうと思います。
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