2024年6月12日:定期的な運動で代謝がどう変わるかを徹底的に調べた論文4報

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「健康のために、定期的に運動しましょう。」という、よく言われるこのフレーズ。

確かにその通りなんですが、運動すると体にとってどんないいことがあるのか、まだまだ分かっていないことが多いようです。

特に、私たちの外からは見えない身体の中の臓器も、定期的に運動することで健康な状態を維持できるといわれています。しかし、各臓器で具体的に何が起きているかは、私たちには体感できません。

そのため、運動を定期的にすることで体内の臓器においてどのような変化があるのかは、動物試験で調べられています。

その中で今年2024年の4月、ある大規模なプロジェクトから、ラットに運動させたときに体のあらゆる臓器で何が起きているかを徹底的に調べた、続々と論文が登場しています。

 

そこで今回は、「定期的な運動で代謝がどう変わるか」を徹底的に調べた論文4報を紹介します。

紹介する論文はすべて、Molecular Transducers of Physical Activity Consortium (MoTrPAC)というプロジェクトの中で行われている研究で、2024年4月以降にその全貌を示したNatureの論文を皮切りに、派生する3つの論文も出版されているものです。

※本ブログは、直近1年程度に出版された論文の中から、著者が独断と偏見で選択した論文を紹介しています。

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目次

定期的な運動で代謝がどう変わるかを徹底的に調べた論文4報

習慣的に運動させたラットの体内組織を、マルチオミクス解析してデータ化 Nature誌

まずは、MoTrPACというプロジェクトで何を調べ、それがとんでもない規模であることを示したNatureの論文。

タイトルは、

Temporal dynamics of the multi-omic response to endurance exercise training

https://www.nature.com/articles/s41586-023-06877-w

 

この論文の趣旨は、習慣的な運動による体内代謝状態の変化をマルチオミクスでデータ化し、今後の詳細な研究に役立てること。

具体的には、ラットに8週間運動させ、各組織を採取してマルチオミクス解析を実施しています。

ただその規模がすごく、オス/メス両方について、全血、血漿、18組織のトランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、リピドーム、ホスホプロテオーム、アセチルプロテオーム、ユビキチルプロテオーム、エピゲノム、イムノームを全部やっています。しかも、0~8週間のうち4点で上記を実施しています。

ご察しの通り、すさまじいデータ量です。

データはプラットフォームに保管されており、誰でも使用できるそうです。

 

この後紹介する論文3報では、この論文で蓄積したデータを使って具体的な現象やメカニズムに迫った研究が示されています。

習慣的な運動のよるミトコンドリア機能の変化を捉える Cell Metabolism誌

まずは、運動したラットのマルチオミクスの結果をもとに、特に運動のよるミトコンドリアの機能についてまとめた論文。

タイトルは

The mitochondrial multi-omic response to exercise training across rat tissues

https://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4131(23)00472-2

 

45個の研究、総勢約1000万人が対象となったこちらのメタアナリシス。健康アウトカムも多岐にわたっており(mortality, cancer, and mental, respiratory, cardiovascular, gastrointestinal, and metabolic health outcomes)データの膨大さに圧倒されます。

結果としては、超加工食品への曝露が増加すると、死亡率、精神疾患、心臓代謝系疾患のリスクが増加することを確認しています。

運動が皮下脂肪の代謝状態に与える影響には性差がある Nature Metabolism誌

習慣的な運動で皮下白色脂肪組織の代謝がどう変わるか、運動ありorなしラットの各組織を8週間継時的にマルチオミクスした研究。

タイトルは

Sexual dimorphism and the multi-omic response to exercise training in rat subcutaneous white adipose tissue

https://www.nature.com/articles/s42255-023-00959-9

 

運動の影響に性差があることを見つけています。雄は好気性代謝、雌はインスリンシグナルや脂肪形成で変化があったそうです。

運動による疾患関連遺伝子の発現変化を網羅解析 Nature Communications誌

習慣的に運動させたラットの各組織における疾患関連遺伝子発現への影響を調べた論文。

タイトルは

The impact of exercise on gene regulation in association with complex trait genetics

https://www.nature.com/articles/s41467-024-45966-w

 

また、ラットの結果を別のヒトデータと突き合わせて評価しています。考察では特に心臓代謝、体脂肪、喘息に関連する遺伝子に言及しています。

終わりに

定期的な運動は身体のあらゆる組織にいい影響を与えますが、ヒトではそれを徹底的に調べることはできません。

この「MoTrPAC」の中で行われている運動したラットのマルチオミクスデータは運動による影響を徹底的に評価する足掛かりとなり、今後の運動研究の大きな基盤となってくる可能性があります。

2024年4月から論文が多数出てきているので、今後も動向に注目です。

 

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この記事を書いた人

食品メーカー研究職。
修士卒→食品メーカー(この間、社会人博士取得)→2023年に研究職で転職。
専門は質量分析・オミクスを使った研究/発言は個人的見解です
Twitter:https://twitter.com/NzXyZQDOCMpLgz5

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