倫理的ハードルなどが理由となり、実際に臨床検体を扱った研究が難しい領域があります。
そのような領域においては、倫理的課題をクリアした手法で採取した検体を起点に作られる各組織のオルガノイドが不可欠です。実際、オルガノイド開発の研究は頻繁に見かけます。
今回は、オルガノイドの新技術やその利用について、過去にツイッターで紹介した論文3報を紹介します。
※本ブログは、直近1年程度に出版された論文の中から、著者が独断と偏見で選択した論文を紹介しています。
オルガノイド開発に関する論文3報
ヒト結膜から結膜オルガノイドを作った Cell Stem Cell
ヒト結膜から結膜オルガノイドを作り、機能や分化を調べるだけでなく、マウス結膜へ移植して定着を確認した論文。
タイトルは、
Human conjunctiva organoids to study ocular surface homeostasis and disease
ヒトとマウスで両方実現していて、結膜上皮のトランスクリプトームや代謝物の評価もしています。
今後は様々な結膜関連疾患の研究に使われ、結膜の細胞治療に大きく貢献する基盤技術になるかもしれません。
論文リンクはこちら↓
https://www.cell.com/cell-stem-cell/fulltext/S1934-5909(23)00438-1
ヒト胎児の脳からオルガノイドを作った Cell
ヒト胎児の脳をin vivoで培養することでオルガノイドが作られること、しかも脳組織の特徴をしっかり維持していて、様々な研究に対応できることを示した研究。
タイトルは
Human fetal brain self-organizes into long-term expanding organoids
成熟過程の観察だけでなく、ゲノム編集で脳腫瘍モデルを作って薬剤スクリーニングもやっています。
論文リンクはこちら↓
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867423013442
妊婦の羊水検査検体から、細胞を取ってオルガノイドに Nature Medicine
妊娠中の羊水検査用の検体から胎児に由来する各組織の細胞を単離し、そこから各組織の上皮オルガノイドを作ったという論文。
タイトルは
Single-cell guided prenatal derivation of primary fetal epithelial organoids from human amniotic and tracheal fluids
小腸、尿細管、肺の各組織の上皮オルガノイドを作り、元組織と同じ特徴を示すことを、トランスクリプトームやタンパク発現解析を行って確認しています。
この技術により、特に妊娠後期の胎児を対象とした基礎研究を、低侵襲サンプルから展開できるようになるかもしれません。
論文リンクはこちら↓
https://www.nature.com/articles/s41591-024-02807-z
終わりに
オルガノイド技術は、倫理的に難しい研究対象に対する基礎研究を可能にしてくれる可能性を秘めています。
特に、胎児や脳など、実験研究が難しい領域においてオルガノイドの進歩は欠かせません。
上記に限らず、今後の技術の発展もチェックしていきたいです。
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