私たちは食事で脂質をたくさん摂取していますが、その吸収代謝については、まだまだ分からないことがたくさんあるようです。
今回は、直近1年で特に面白かった、脂質の吸収代謝に関する論文4報を紹介します。
※本ブログは、直近1年程度に出版された論文の中から、著者が独断と偏見で選択した論文を紹介しています。
脂質の吸収代謝もまだまだ分からない!な論文4報
トリグリセリドの新しい合成経路? Nature
半年近く前ですが、トリグリセリドの新しい合成経路・酵素(DIESL)が見つかったという論文です。
タイトルは、
Identification of an alternative triglyceride biosynthesis pathway
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06497-4
DIESLは転写因子TMX1によって合成速度が制御されていること、マウスでDIESLを欠損させると出産後のトリグリセリド合成悪化で成長がかなり悪くなることも報告されています。
コレステロールの吸収後の輸送経路は実は不明だった! Science
食事由来コレステロールの小腸での吸収機構について、まだ分かってなかった点を明らかにした論文。
タイトルは
Aster-dependent nonvesicular transport facilitates dietary cholesterol uptake
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adf0966
コレステロールを腸の細胞が取り込んだのちに、どのように体内の輸送系に入っていくかを明らかにしています。
腸細胞のミトコンドリアが食事脂質の吸収に関与 Nature
腸上皮細胞のミトコンドリアが食事由来脂質の吸収に関わることを明らかにした論文。
タイトルは
Mitochondrial dysfunction abrogates dietary lipid processing in enterocytes
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06857-0
ミトコンドリアが機能不全になると、カイロミクロン形成ができなくなるそうです。
また、腸のミトコンドリアの機能不全が関わる疾患では、腹痛・下痢・便秘などの消化器症状も併発されやすいらしいことも、この文献で初めて知りました。
新しいコレステロール代謝ホルモンを発見! Cell
最後にこれ。個人的にも、これはとんでもなく凄い発見なんじゃないか?と思っています。
腸から分泌される新しいホルモン「コレシン」を発見し、肝臓でのコレステロール合成を抑制すること、腸でのコレステロール吸収に応答して血中コレステロールを調節することを、ヒトとマウスで明らかにした論文。
タイトルは
A gut-derived hormone regulates cholesterol metabolism
https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(24)00226-5
コレシン合成遺伝子もヒトで特定し、コレシンの作用機序も明らかにしています。
発見のインパクトがすごく大きいだけでなく、主な作用機序まで見せていて、さすがCellです。
終わりに
油脂・脂質の吸収代謝についてはすでに教科書にもたくさんの情報が載っていますが、
それでもまだまだ明らかになっていない点は多いようです。
基礎的な栄養学も、まだまだ調べることは多そうです。
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