メタボロミクス。プロテオミクス、ゲノミクス…
ここ数年本当にいろいろなオミクスが運用され、生物のメカニズム解明だけでなく、個人の健康や疾患リスクの判別・予測にもどんどん使われてきています。
実際、ヒトの健康に関する予測において超ビッグデータであるオミクスデータは重宝され、様々なモデルに実用化されていますね。
今回は、オミクスデータからヒトの健康を予測した論文を3報紹介します。
※本ブログは、直近1年程度に出版された論文の中から、著者が独断と偏見で選択した論文を紹介しています。*ほかにも似た論文はたくさん出ていますが、ご容赦ください。
オミクスデータからヒトの健康を予測した、スケール凄まじい論文3報
血液プロテオミクスが、疾患発症リスク予測に重要 JAMA
のべ2万人近くの血漿プロテオミクスから得た約5000種のタンパク情報を使い、動脈硬化性心疾患の発症リスクスコアを算出し、このリスクスコアを臨床パラメーター中心の予測モデルに組み込むことで、精度を上げられるかを調べた論文です。
タイトルは、
Evaluation of Large-Scale Proteomics for Prediction of Cardiovascular Events
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2808522
心筋梗塞、脳卒中、冠状動脈性心疾患による死亡または心血管死を対象としたモデルで、臨床パラーメーターのモデルだけでも精度が良かったモデルに対して、プロテオミクスの結果を入れることでさらにレベルアップしたモデルに変身したようです。
代謝物データと関連する遺伝子座をGWASから特定する Nature
33コホート13万人のゲノムと代謝物データを使い、特定の代謝に関わる遺伝子座の特定や疾患との関連を報告した論文。
タイトルは
Genome-wide characterization of circulating metabolic biomarkers
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07148-y
400以上の遺伝子座の関与を含む、8000以上の遺伝子-代謝物の関連を見出したとのことで、その中でもTRIM5という遺伝子による脂質代謝への関与や心疾患リスク低下との関連を報告しています。
RNAseqからマルチオミクスデータを予測する Nature
「遺伝子情報があれば、オミクスデータって予測できるんじゃない?」を実現してしまった論文。
タイトルは
An atlas of genetic scores to predict multi-omic traits
https://www.nature.com/articles/s41586-023-05844-9
全血RNAseqデータをもとにプロテオミクスとメタボロミクスの結果を予測できる機械学習モデルを作り、「遺伝スコア」という形で利用できるように開発されています。
実際に、人種間による遺伝的背景の違いを比較する、疾患との関連やメカニズムの推定(論文ではJAK-STAT シグナル伝達や冠動脈アテローム性動脈硬化を対象としている)も行っています。
終わりに
オミクス技術は近年普通にどこでも使われるようになっているだけでなく、さまざまな解析技術と組み合わされてとんでもないスピードで進化しています。
今回の論文は、オミクスを使って何かを予測するタイプの研究を3報紹介しましたが、似たような論文は毎日のように出版されています。
私自身もオミクスを普段使っていますので、何とかついていかなくてはと必死です…
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