研究職の就職活動でよく聞く話題の一つに、
「学生時代の研究は、企業へ就職しても活かされるのか」
というものがあります。
確かに、大学・大学院と続けてきた研究や関連スキルには一定の自身があるでしょうし、
可能ならその近い領域の仕事を企業へ行っても行いたいと考えることもあるでしょう。
一方で、企業には得意とする研究領域があり、
企業の内容が学生自身の専門性と合致していないことがほとんどでしょう。
一方で、入社後に大学時代の専門性が活きる研究テーマを与えられ、
その領域での研究を継続している人がいることも事実です。
専門性が活きる研究を担当できる人とそうでない人は、何か違いがあるのか、
もし専門性が活きない研究を担当できない可能性が高いなら、
就職活動ではどのようなスキルや価値観が評価されているのか、
この辺りについて疑問に思ったことはないでしょうか。
この記事では、まず
「大学時代と同じ分野の研究を、食品会社の研究職で担当することはできるのか?」
というテーマで、食品会社研究職の著者の視点から書いていきます。その後、
「企業と専門性が合致していない学生は、どのようなスキルを身につけるのがよいか」
についても書いていきます。
ほとんどの人は、大学の研究内容とは異なる研究を行っている
結論としては
大学時代の研究と近い研究を担当する人は、非常に少ない
となると思います。
理由としては、以下のようなことが挙げられます。
・大学時代の研究内容が、就職先の企業でも行われている確率が低い
・食品会社は実用化研究が多く、大学のような基礎研究を担当させてもらえる人数が少ない
そもそも、大学と企業では研究に対するスタンスが異なることが多いです。
企業ではどちらかというと、モノづくりや仕組みづくりなど、
実用化やビジネスにつながる研究に重点が置かれることが多いです。
そのため、学生時代の研究と企業で行っている研究がピッタリマッチする確率は高くありません。
そして入社して研究職に配属された後も、
新入社員の配属や研究テーマの割り当ては会社の事情で決められることが多く、
学生時代の経験がピッタリはまる研究が回ってこない可能性が高いです。
そのため、食品会社の研究職を希望されている方は、
「学生時代とは異なる研究を担当する可能性が非常に高い」
と考えていただいた方がよいと思います。
企業が求める専門性と合致した一部の人は、大学時代と近い研究を担当することもある
一方で最近一部の企業では、特定の専門領域で活躍している学生(主に博士)を
ピンポイントで採用しているようです。
私の経験や、現在の食品会社の求人情報をいくつか眺めた限りでは、
①企業が注力している特定の研究領域を学生時代に行っていて、業績がすごい学生
②データサイエンスを学んでいた学生
などが、ピンポイントで採用される可能性があります。
この場合、学生時代の経験が直接活きる研究を担当できる可能性があります。
しかし、このピンポイントの採用は、
企業が求めるスキルを持った学生が、偶然応募してきた(もしくはスカウティング)時に成立します。
そのため、学生時代の研究領域で企業でも活躍したい学生ができることは、
「その研究領域での採用を行っている企業へ応募すること」
くらいしかありません。
しかし先述の通り、大学の基礎研究がそのまま企業で活かせる確率は少なく、
ましてやその研究領域で求人が出る確率は、非常に低いです。
大学院の研究室へ届いた企業からのスカウトの中身が
学生自身の専門性と合致していた時くらいでしょう。
以上のことから、「学生時代の専門性が活きる研究を企業で担当できる人は、ほんの一握り」
と考えてよいと思います。
学生時代とは異なる研究でも活躍できる人になるために必要なこと
「自分は上記の研究分野ではないな…」と感じだ方、安心してください。
大学での研究内容が企業の研究分野と完全に一致している学生は、ほとんどいません!
そのため、就職活動で採用枠を争う学生たちの多くは、
「自分の研究分野と企業の研究領域が合致していない」
状態で就職活動に挑んでいます。
そのような学生たちが応募してくる中で、
採用する企業はどのような視点で研究職の採用を考えているか想像してみましょう。
結論、「入社後に当社の研究職として活躍してくれそうか」を見ています。
少し分解すると、以下のような能力が挙げられます
・研究における基本的な考え方(研究の組み立て、実験的思考、など)ができる
・自分の研究について、分かりやすい言葉で相手に説明できる、質疑応答ができる
・文章が書ける、分かりやすい資料が作れる
・一般的な情報収集力がある
・学生自身の研究に対する考え方が、応募している企業の考え方と一致している
上記の能力を応募書類や面接などを通して評価し、
「この学生ならこの会社の研究でも活躍してくれそう」と感じられた学生が
選考を進んでいき内定に近づいていきます。
そのため、食品会社の研究職で内定を得たい方は、
上で記載された能力を身に着け、それが伝わるような応募書類を作り、面接でアピールする
ことが求められます。
そして、企業が掲げている研究に対する価値観・考え方をOBOGなどから聞き出し、
自身の応募書類や面接での想定問答に反映さえておくとよいでしょう。
食品会社の研究で活かされた、学生時代に身に着けた経験・スキル
食品会社で研究職を5年以上担当してきた私の経験ですが、
大学・大学院生時代に身に着けた以下のスキルは、実際に企業の研究でも活きていると思います。
論文や情報検索ツールを使用した情報収集力
論文を読むことは企業で研究をする上でも不可欠です。
特に、学生時代とは異なる研究領域を担当する場合、
最初は文献を読んで研究領域の概要を理解することから始まります。
学生時代に身に着けた論文を読むスキル・習慣は、企業においても活かされます。
また、最近はChatGPTなどのAIツールを使うことで,
知りたい情報に簡単にアクセスできるようになってきました。
最新のAIツールをうまく取り入れることで、情報収集の効率が格段に上がるはずです。
HPLC、GCなどの分析機器を使った経験
食品会社では、製品に含まれる栄養成分や機能性成分の分析を行っていることが多いです。
この場面では、HPLCやGCなどの分析機器を使用します。
研究職としての配属先として
分析機器を使用する部署が含まれている可能性があり、
その場合は学生時代のHPLCやGCの使用経験が活きてくる可能性があります。
私は学生時代に様々な種類の分析機器を使用しており、
この経験が企業での最初の配属先で非常に役立ちました。
パワポなどの発表資料作成スキル
必ずしも良いという内容ではありませんが、
企業に入ると他人や他部署へ何かを説明する機会が非常に多いです。
その際、見やすい発表資料を作れるスキルが活きてきます。
学生時代、研究室内・学会・審査会などで発表資料を作る機会が非常に多くあります。
発表資料は作成者の個性がかなり強く出ており、
見やすい資料とそうでない資料がはっきり分かれていると思います。
そのくらい、発表資料作成スキルには個人差があります。
見やすい発表資料を作れるスキルがあることによって、
他部署へ分かりやすい説明ができる人という評価を得られ、
仕事上のコミュニケーションがより進めやすくなります。
就職活動の際に研究概要などを紹介する際には、
ぜひ見やすい資料を提示して相手に気持ちよく資料を見てもらうことで、
研究に関する質疑応答の質が上がり、結果として高い評価や内定が得られる可能性が高まるはずです。
まとめ
今回は、
「大学時代と同じ分野の研究を、食品会社の研究職で担当することはできるのか?」
というテーマから始まり、
「企業と専門性が合致していない学生は、どのようなスキルを身につけるのがよいか」
についても、私の経験をもとにまとめました。
・ほとんどの人は、大学の研究内容とは異なる研究を行っている
・企業が求める専門性と合致した一部の人は、大学時代と近い研究を担当することもある
・学生時代とは異なる研究でも活躍するためには、「入社後に当社の研究職として活躍してくれそう」と評価してもらえるスキルを身に着け、それを就職活動でアピールする必要がある。
・食品会社に勤めた著者の経験では、学生時代に身に着けた情報収集力、分析機器のスキル、発表資料作成スキル、などは企業でも活かすことができる。
大学時代の研究とほぼ同じことを、食品会社で実施できる可能性はあまり高くありません。
そのため、就職活動では専門性以外のところで勝負すること多く、その際の企業側の評価軸は
「入社後に当社の研究職として活躍してくれそうか」という点になります。
上記にまとめた考え方を参考に、評価につながるスキルを身に着けて
「この人は、この会社で研究職として活躍してくれそうだ」と思われる人材を目指すことが、
就職活動で希望する会社に進める確率を高める方法かもしれません。
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