「博士を持っていても、企業では何のメリットもないよ!」
「いやいや、研究職は博士しか採用しない会社も多いよ!」
どちらの意見も聞いたことはありませんか?
理系学部学生の大半は、学部4年生もしくは修士2年生の段階で新卒として企業へ就職するのが一般的となっています。
特に、修士卒の学生は企業の理科系の採用枠で就職できる可能性が高いようです。
修士の学生は博士課程へ進学し研究活動を続けることもできますが、
その割合はあまり多くないようです。
博士卒の学生を採用している企業の数は修士の学生と比べると非常に少なく(もしくは修士と博士で待遇が同じでメリットが少ないため)、
博士に行きたくてもいけない学生もいるようです。
この状況だけみると、企業は博士を必要としていないように見えてしまいます。
一方で、一部の企業では、社員(研究員)を大学の博士課程へ進学させるケースがあります。
少なくともこのような企業では博士号を推奨しているように見えますが、
一方で新卒採用では博士卒をあまりとらないことも多いです。
社員が博士号を持っていることは企業にとってプラスなのか、なかなかわかりづらいように感じられます。
今回は、
博士号を持っていることが会社員にとって優位性のあるものなのか、
そして、「自分自身のためにも博士号は持っておいた方がいい」という私の考えについてお話しします。
博士は付加価値、研究者としては持っていた方がいい。
博士号が社内で活かされるかは、正直なところ会社次第
博士号が社内で活かされるかは、
正直なところ、「会社次第です」という答えになります。
会社・研究所・部署ごとに、博士への進学や博士取得者に対する印象や期待が全然違うからです。
例えば、社内の研究者育成プランの一つに「博士取得」が含まれている会社もあります。
このような会社では、この仕組みに乗っかって博士課程へ進んだ方もいるはずです。
しかしこのケース、「会社と大学で共同研究を結び、会社の研究テーマで博士号を取らせる」という条件付きであることが大半です。
会社側は、「博士号をとらせること」だけを目的にしているのではなく、
「共同研究で会社のためになる結果を得てもらい、ついでに博士号も取ってもらう」というスタンスでいることが多いです。
ただ一方で、このような会社では研究員が出世する(はっきりとは言われていない)条件の一つに博士修了が入っている可能性があります。なかなか難しいですね。
一方、社内に博士取得者がいない、新卒採用も学士卒や修士卒までの会社では、
博士というものにあまり価値を置いていない可能性があります。
研究所の偉い人たちも博士号を持っていませんので、社員にそういった資質を求めないんでしょう…。
裏を返すと、自分が博士号をとれば周りから一つ抜きんでることにもなります。
異動してきた研究所のトップが「これからは博士持ちの研究員を増やしたい」と宣言したら、その時点で社内でアドバンテージを得られるかもしれません。
研究者として生きていくなら、博士号を持っていて損はない。
アカデミアの研究者にとって博士号は研究員としての合格証みたいなもので、
これをとることで各ポストへの応募ができます。
企業ではそういったケースは必ずしも多くはありませんが、
博士号は自分の研究者としての資質を分かりやすく示してくれるものであり、特に外部と仕事をする際に役立つことがあります。
たとえ企業の研究員だとしても、共同研究などでアカデミアの研究者と一緒に仕事する機会はあるはずです。
その時に、博士を持っていることによって(特に海外の研究者とは)序盤のコミュニケーションが非常に進めやすくなります。仕事をスムーズに進めるための最初の潤滑油になってくれます。
そして何より、博士号は「自分は研究員としての合格証を持っている」という自分自身の付加価値化につながります。
博士をとるためのプロセス(自分で研究を立案・実施し、論文を書き査読をクリアして受理させ、博士論文の審査を通過する)を通過したという、
研究者としての一定の能力を示すことになるからです。
特に30代などの若い方であれば、民間企業以外の研究機関も転職対象になるなど、自分の可能性を広げることにつながるはずです。
もちろんその人の専門性や成し遂げた仕事の方に注目すべきですが、博士号は名刺にも書けますし分かりやすい形で自分の価値をアピールしてくれるはずです。
まとめ
博士号が会社で活かされるかは会社の雰囲気によりますが、
自分の付加価値化という面でとっておいて損はないと思います。
博士号そのものは「足の裏の米粒、とっても食えない」と言う人もいますが、博士号が自分の価値を高めてくれる側面は確実にあります。
企業の研究者でもタイミングを見て博士進学を申請してみてはいかがでしょうか。
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カテゴリー:研究職と博士号
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