この記事では、当ブログ運営者のツイッターアカウントを使用して、
「企業研究職の特許・論文事情」について調べたアンケートの結果をまとめています。
特に学生の皆様からからすると、
「研究者は論文を読むのは普通だけど、企業の人は特許も読むらしい」
くらいの情報しかないと思います。
また企業研究者の中にも、
「自分はどちらか一方しかほとんど読まないけど、みんなどうなんだろう?」
と気になる人もいるかなと思います。
そこで、本ブログの著者のツイッターアカウントを使用して企業研究職の皆様にアンケートを取り、
「企業研究職の特許・論文事情」について調査しました。
以下のリンクから、私のアカウントを見ることができます。
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今回は、
「企業研究職の特許・論文事情:どっちも読んでる?書いてる?」
という内容で、ツイッターアンケートの結果をまとめました。
企業研究職の特許・論文事情:どっちも読んでる?書いてる?
企業研究職は特許も論文も読んでいる?
早速、ツイッターを使用して研究職の皆様にアンケートを取りました。
まずは、
「企業研究職の皆様、仕事で特許・論文は読みますか?」という質問を設定し、以下の4択で聞き取りました。
・特許も論文もよく読む
・特許はよく読むが論文はほぼ読まない
・論文はよく読むが特許はほぼ読まない
・特許も論文もほぼ読まない
結果はこちら↓
「どちらもよく読む」が約40%、「論文はよく読むが特許はほぼ読まない」も約40%を示す結果となりました。
また、この結果を「論文」あるいは「特許」という切り口で見てみると、以下のこともいえそうです。
・論文をよく読む企業研究者は80%を超えている。
・一方で、特許をよく読む研究者は50%程度にとどまっている。
世間一般では「企業研究では特許が大事」と言われている一方で、実際に現場で特許に頻繁に目を通しているのが約半数しかいないというのはかなり衝撃的で面白いです。
これの理由について、以下のようなことも考えられるかなと私は推察しています。
・論文を読む習慣は学生時代に身に着けている人が多く、多くの研究者が気軽に目を通せる。
・特許は検索方法や読み方について学生時代には習わないため、目を通すことに心理的ハードルがある人が多い。
この辺りは、会社での研修や普段の業務を通して、特許などに目を通す習慣をつけていくしかないのかなと想像させられます。
特許や論文の書き方について、社内で研修や指導の仕組みはあるか?
次は、特許や論文について会社として強化する制度が整っているかを調べる目的で、
「特許や論文の書き方について、社内で研修や指導の仕組みはありますか?」というアンケートを設定し、
これまでと同じように4択にして回答していただきました。
結果はこちら↓
これはなかなか衝撃的。約60%の会社が「特許も論文も、書き方の指導や研修をしていない」ということが明らかになりました。
幸い、約40%の会社が特許に関する研修は行っているものの、それにしても半数近くは特許に関する指導を行っていないことが確認されました。
繰り返し書いている通り、企業での研究開発において特許はかなり重要性が高い仕事で、ビジネスを展開する上で特許に関する知識は不可欠です。
一方で、それを体系化して指導していない会社が一定数あることについては、日本全体の研究開発を考えるうえでも気にすべき点なのかもしれません。
特許や論文を出願したことがあるか?
次に、実際に特許や論文を主担当として出願・投稿したことがある人の割合について調査しました。
ツイッターで
「特許や論文を出したことはありますか?(自分がメインで出願・投稿したものに限ります)」というアンケートを設定し、以下の4択で答えていただきました。
・特許も論文もある。
・特許はあるが論文はない。
・論文はあるが特許はない。
・特許も論文もない。
結果はこちら↓
かなりきれいに票が分かれ、両方経験がある人もどちらの経験もない人も一定数均等にいることが想定されました。
研究開発者としてツイッターを眺めている研究開発に関する情報収集意欲が高い人が多く、特許・論文の業績が多い方にバイアスがかかっている可能性もありますが、そこを差し引いてもかなり均等に分布しているなという印象でした。
企業研究者は、特許や論文を書きたいと思っている?
次に、研究者自身の特許や論文に対する意欲を調べました。
「特許や論文を書きたいと思っていますか?」というアンケートを設定し、これまでと同じように4択で回答していただきました。
結果はこちら↓
「特許も論文も書きたい!」と思っている研究者が約60%、どちらかだけでも書きたいと思っている人を加えると、80%以上の人が特許や論文を自ら出したいという意欲を持っていることが分かりました。
この結果には少し安心ですね。
一方で、研究者自身の意欲は高いのにもかかわらず、約半数の会社で特許や論文を出させるための研修や指導が体系的にできていないという状況は、「特許や論文は研究者個人の努力頼み」のような側面があることも感じさせられます。
この状況が、業績をどんどん出していきたい研究者のモチベーションを、会社の仕組みが下げてしまっている可能性がありますね。
私自身メーカー2社で研究開発職をしてきましたが、現職の方が特許・知財に関する指導が行き届いており、一定の質で特許出願ができそうという安心感があります。
業績をどんどん出していきたい研究者は、業績を出したいことを自らアピールするだけでなく、可能であればそのような会社の制度や環境づくりに励む、難しければ業績を出しやすい会社に転職するなど、自らアクションを起こしていく必要があるかもしれませんね。
(参考)回答者の年代
今回紹介した4つのアンケートは一連のツリーで行っており、その最後に回答者の年代の分布を聞き取りました。
20~30代が中心の結果となっていることを、ご留意ください。
まとめ
・企業研究者は、特許も論文もよく読む人が約半数。
・論文をよく読む人が約80%いる一方で、特許をよく読む人は約50%程度。
・特許を書く指導や研修ができている会社は約50%しかない。
・特許あるいは論文を書いた経験がある人は約60%。
・企業研究者の80%以上は、特許あるいは論文を書きたいと思っている。
企業の研究では、特許や論文から情報を集め、得られた研究成果を特許として権利化していくことは非常に重要です。
自身の研究・業務のレベルを高めていくうえでも、特許や論文にはたくさん触れていきましょう。
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