この記事のポイント
・社会人博士進学についての会社の説得は、どこで躓くか分からない。
・社会人博士の研究を「会社の仕事の一つ」として認めてもらうとよい。
・「社会人取得により会社にもたらすメリット」を自分の中で整理しておくとよい。
・進学先の先生からの推奨をもらっていると、許可が下りやすいかもしれない。
・入試の準備は余裕をもって。学生時代の研究内容の場合十分に復習を。
前回の記事では、
大学との共同研究をきっかけに
社会人博士進学の準備を始めた頃までお話ししました。
前回の記事をまだ見ていない方は、こちらをご覧ください。
今回は第2弾として、
「社会人博士経験談パート2:会社の説得と入試準備」
という内容で記事を書いていきます。
私は、以下のような点で苦労しました。
・研究所長と本部長の仲が良くなく、許可取得がなかなか進まない。
・「社会人博士取得により会社にもたらされるメリット」を会社に示す。
・入試で行う研究プレゼンの準備。
社会人博士進学が決まる経緯から博士号取得までを、時間軸に合わせて書くので、
少しでも参考になることがあれば幸いです。
社会人博士経験談パート2:会社の説得と入試準備
会社との交渉
まずは、進学許可を得るための会社との交渉です。
手順としては、以下の通りです。
①自分の上長(課長、研究所長)を説得し、
②研究所長から本部長と常務へ説明してもらい許可をいただく。
まず、①課長、研究所長の説得ですが、
こちらはあっさりと許可をもらいました。
許可いただけた理由としては、以下のようなものがあったようです。
・共同研究でデータが出ており、この業績で博士号をとれるなら労力が少ない。
・労力が少ないので、仕事への影響も小さいと判断された。
・課長も研究所長も博士号持ちで、博士号取得の仕事上のメリットを知っている。
・研究室のボスから推薦をもらっている(メールで直接推薦してもらった。)
しかし、ここから先で苦労しました。
②研究所長から本部長への交渉がなかなか進みません。
その理由は以下のようなものでした。
・研究所長と本部長の仲が良くなく、コミュニケーションが少ない。
・そのため、少し話すだけで終わるような話もなかなか進まない。
社会人博士進学のため願書の提出が1月末締め切りで、課長と研究所長の許可は11月末の時点で得ていました。
しかし、願書締め切り前日まで許可の連絡が届きません。
何度も研究所長へリマインドメールを送り、
願書の執筆も済ませ、ただひたすら許可の連絡を増しました。
やっと許可が下りたのは、なんと願書締め切り日の3時間前でした。
誰かが私の進学を嫌がっているのではないかとすら思っていましたが、何とか会社から進学許可をもらうことができました。
ただし、進学に合わせて本部長から一つ課題を与えられました。
社会人進学が会社にもたらすメリットを説明する。
本部長から与えられた課題は、
「社会人博士取得により会社にもたらされるメリット」
を会社に示すことでした。
困惑しました。
正直なところ、社会人博士への進学は自分が博士号を取得することが目的で、
自分自身のキャリア形成のためとしか考えていませんでした。
また、研究成果を会社事業へ活かすことも大きなメリットではありますが、
それは共同研究によって得られるものであり、
個人の博士号取得によるものではありません。
共同研究と個人の博士取得。
この2つを区別したうえで、個人の博士取得が会社にもたらすメリットを具体的に説明するのに、私はかなり頭を痛めました。
いろいろ悩んだ末に、以下のような提案をして納得してもらいました。
・博士号取得のプロセスを通して、研究遂行に必要な能力を身に着けられる。
・この能力は、会社の後輩や部下を研究者として育成する際に不可欠。
・博士号取得により海外の研究者とのコミュニケーションがとりやすくなる。
・博士号取得者が増えることで、研究開発へ力を入れているというイメージの獲得につながる。
・博士を取得できる見込みがあると、研究室のボスが推薦している。
実際の文書にはより細かく記載していますが、
大きくは上記の内容を書きました。
この内容を研究所長から本部長へ回してもらい、何
とか納得してもらうことができました。
ただ後日、本部長と直接話した際には、
「先生からの推薦もらってると断れないよね…」と話しており、
先生からの推薦は効果抜群のようです。
社会人博士を希望される方は、
進学予定先の先生などの推薦を事前に取り付けて、
そのことを会社に伝えておくと
進学許可が下りる可能性が上がるかもしれません。
入試の準備
会社の許可をとって大学へ願書を提出し、面接までの準備に入ります。
面接は、研究紹介と質疑応答です。
そこで、これまで共同研究で行ってきた研究の進捗を説明し、
今後の展望を含めてプレゼンをすればよいかと考えていました。
しかし、募集要項を見て愕然とします。
「修士課程の研究内容を説明し、質疑応答を行う」
この結果、
何年も前の修士課程の研究を復習し、
完璧に仕上げるというタスクが発生しました…。
大学院卒業以降ほとんど見たことがなかった過去の資料を引っ張り出して当時の研究データを復習するだけでなく、
私の修了以降に出版された関連論文に一通り目を通し、
自分の研究の位置づけとその後の発展内容について、頭の中に叩き込みました。
整理した状況をもとに自分の修士論文発表会の発表資料を作り直し、発表練習も行いました。
本番までの1か月間、平日の昼と土曜日は会社の仕事や大学での研究を行い
平日の夜と日曜日は面接対策に充てていました。
今思えば、あの当時は非常に苦労しました。
そして何とか本番の面接を無事に終え、
合格し進学を果たすことができました。
入試の準備は、会社の業務や研究とは別の時間で行わなくてはいけません。
当時は独身で時間を十分に確保できたため1か月で間に合いましたが、
できれば早い段階から準備を進めておくことをお勧めします。
まとめ
・社会人博士進学についての会社の説得は、どこで躓くか分からない。
・社会人博士の研究を「会社の仕事の一つ」として認めてもらうとよい。
・「社会人取得により会社にもたらすメリット」を自分の中で整理しておくとよい。
・進学先の先生からの推奨をもらっていると、許可が下りやすいかもしれない。
・入試の準備は余裕をもって。学生時代の研究内容の場合十分に復習を。
社内の説得や入試準備でもそれぞれ躓くことがあると思うので、
準備は時間的な余裕をもって行う方がよいでしょう。
次回は、進学後の研究と仕事の両立について書いていきます。
社会人博士を希望されている方の、少しでも参考になれば幸いです。
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