社会人博士体験談!投稿論文を出したいが、会社の意向との板挟みに悩む。

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前回の記事では、

会社の業務に時間をとられて社会人博士の研究に時間が割けないということに悩み、

その解決策として、

社会人博士の研究がいかに会社のためになるものかを上長へ説明し、

業務時間中に社会人博士関連の仕事を行う許可をもらうことで、

時間を捻出しました。

 

まだ読んでいない方は、ぜひ以下からご覧ください。

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今回は第4弾として、

社会人博士経験談パート4:投稿論文でもひと苦労:会社との戦い

という内容で記事を書いていきます。

社会人博士卒業に必要な査読付き英語論文の投稿について、

会社員ならではの苦労を経験したので、ご紹介します。

 

ポイントは、以下の内容です。

・論文を出すにあたって会社の承認が必要。

・論文の内容に、会社の意向を反映させなくてはいけないこともある。

・会社の承認に数か月かかり、かなり焦った。

・論文投稿については、早めに会社と情報共有をしたほうがよい。

・無事に受理・公開されるまで、会社からのプレッシャーがあり気が抜けない。

 

少しでも参考になることがあれば幸いです。

 

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目次

社会人博士経験談パート4:論文投稿について会社の承認を得る

論文を出すにあたって会社の承認が必要

少なくとも私が所属している会社では、

学術論文を投稿する際には事前に会社の承認を得る必要があります。

 

論文のドラフトと申請書を添付し、

部長たちから承認を得たうえで投稿できるようになります。

社会人博士の研究とは言え、会社員として行っている研究でもあり、

研究成果は基本的に会社にも帰属します。

 

そのため、会社のプレスリリースなどと同じように

どのような情報が一般に公開されるかを事前に会社と共有することが、

論文投稿における最初のプロセスでした。

論文投稿直前になって、会社から指摘が入ってくる。

私の場合、

社会人博士の研究遂行は、ほとんど研究室のボスや指導教員と行っていました。

 

会社との方向性の共有は

最初のテーマ設定こそ上司や上長と相談して決めましたが、

その後はデータや進捗を課長と共有する程度でした。

上長が、「社会人博士の研究は、基本的に研究室の方向性に任せる」

という方針だったので、その通りに進めていました。

 

さて、データがそろってさあ論文を仕上げようという段階になり、

改めて会社に「論文を投稿する旨」を伝えました。

 

研究室のボスや指導教官と論文を仕上げ、

ドラフトを添付して会社へ承認申請しました。

 

そして、ここからが困難の始まりです。

承認権限のある部長クラスから、無数のコメントと指示が飛んできました

 

具体的にはお示しできませんが、

内容のほとんどは

「この文章やストーリーでは、うち製品の独自の優位性がよくわからない

「はっきり言えないのかもしれないが、有効性をもっと主張してくれ」など、

会社にとってのメリットが分かるような論文に仕上げなさい

という指示でした。

 

その当時、所属する会社の理科系部門の部長に研究所出身の人はおらず、

論文執筆経験のある人は一人もいませんでした。

 

部長たちは、

学術論文は自社の成果をアピールするもの

だと理解していたようで、

そのような側面をもっと押し出してほしいという意向があったようです。

 

さて、とはいえ学術論文ですので、データから示せないことは主張できません。

部長たちの意向を研究室のボスや指導教官へもっていき、

データから示せる範囲の表現で修正していきました。

(もう査読やん!) 

 

修正しては会社へ提出し、また返却されては修正しを繰り返していたら、

結局、この問題を解決するためだけに3か月近くを要してしまいました…

1回分の査読をやり終えたくらいの気持ちでした。

 

一般的に投稿論文を出す場合は、

事前に共同研究者のチェックを受けて

その内容を踏まえて修正することが多いです。

 

しかし企業では、

研究とは直接かかわりがない人たち(私の場合は部長クラス)の意向も

反映しなくてはいけないケースがあります。

 

研究者のマインド会社の意向

この2つの間でかなり揺れ動かされましたね。

 

このように、

論文投稿前に会社の承認が必要な場合、その対応に結構な期間を奪われる

可能性があります。

 

博士課程3年を考えると、こんなところであまり時間をとりたくありません。

3年生になってからだとかなり焦るので、

ぜひ事前に会社とすり合わせを行うことをお勧めします。

受理・公開されるまで、いろいろな理由から気が抜けない。

さて、準備ができた論文を投稿し、査読を受けます。

論文執筆経験者はご存じの通り、査読期間はケースバイケースです。

一瞬で終わることもあれば、年単位のこともありますし、

査読期間を事前に見積もることはほぼ困難です。

 

しかし、会社はスピード感と見通しを執拗に求めてきます。

 

「受理の見込みはあるのか」

「いつ受理されるのか」

「いつ公開されるのか」

部長たち研究内容と関連する部署などからは、

このような問い合わせが頻繁に来ました。

(わからない、で通すしかないんですが…)

 

特に、会社の大きなプロジェクトにかかわっている研究では、

論文投稿と並行して製品開発や販売準備をしているケースもあり、

計画通り進むように、細心の注意を払っています。

 

このように、

ただ論文受理するだけでなく、

それに付随する会社の仕事も背負っていることもあり、

受理・公開されるまで本当にひやひやします

 

結果的に社会人博士修了用の論文は、

厳しい査読はなく投稿から数か月で受理されましたが、

今後論文投稿をする際に同じような思いをすると想像すると、

今でも胃が痛くなりますね。

まとめ

・論文を出すにあたって会社の承認が必要。

・論文の内容に、会社の意向を反映させなくてはいけないこともある。

・会社の承認に数か月かかり、かなり焦った。

・論文投稿に関しても、早めに会社と情報共有をしたほうがよい。

・無事に受理・公開されるまで、会社からのプレッシャーがあり気が抜けない。

 

博士課程修了のための研究とは言いつつも、

会社員として研究活動をしている以上、

その成果は会社の成果としても扱われます。

 

自分の研究の質を高めて世に出していきたいという思いと、

会社のメリットとなる研究成果を出さなくてはいけないという会社からの圧力。

 

社会人博士に限らず、

企業研究員の方が論文を書く際にはこの葛藤が必ずあります。

 

確かにこの葛藤を持ち続けることは精神的につらい時もありますが、

それでも私は、

企業研究員もチャンスがあれば論文執筆はしたほうが良い

と考えています。

研究員として生きるのであれば、論文は自分のキャリアを支えてくれるはずです。

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次回は、

中間審査や博士論文審査会など、大学内の修了要件に関することを書いていきます。

次回こそ本当に最後にします。

 

研究職と博士号に関する記事はこちら

研究職と博士号

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この記事を書いた人

食品メーカー研究職。
修士卒→食品メーカー(この間、社会人博士取得)→2023年に研究職で転職。
専門は質量分析・オミクスを使った研究/発言は個人的見解です
Twitter:https://twitter.com/NzXyZQDOCMpLgz5

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