企業研究職の学会発表:査読なしで研究成果をアピールできる場所

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学会に行くと、

企業研究職の方が一般演題発表をしている場面をよく見かけます。

内容は多種多様ですが、

たいていはその企業の商品やサービスに関するポジティブな研究成果を

発表していることが多いと思います。

 

研究成果を報告する手段は、

学会発表だけでなく、論文、特許(この場合年数を要するが)、

商品化などさまざまなものがあります。

そのなかでも

学会発表という方法は、企業にとっていくつかメリットがあります

 

今回は、

企業が学会発表を選択する理由と、それに対する私見を書いていきます。

企業の研究者がなぜ学会で発表するのか。

まだ就職していない学生の方にとっては新しい視点になるかもしれません。

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目次

企業は、学会で研究成果を発表することで自社のアピールをしている。

学会発表であれば、企業が主張したいことをそのまま発表できる。

企業が学会発表を行うときの利点は、以下の2つです。

・主張したいことを査読なしでそのまま発表できる。

・要旨以外の資料が残りにくい。

主張したい成果を査読なしでそのまま発表できる。

企業が研究成果を対外的に発表する大きな目的は、

成果を公開して注目してもらい、

自社のモノやサービスの拡販につなげることです。

そのため企業は、自分たちの成果をスムーズに公表できる点を重要視します。

 

ご存じの通り、学会での発表内容は査読などの事前評価を受けません。

そのため、自分たちの主張したいことが発表でき

企業が研究成果を発表する上で都合がいいのです。

 

同業者に客観的な評価をもらうという目的もないわけではありませんが、

重要視していないことが多いです。

 

科学的な見地で議論することよりも、

成果を公開すること自体が重要というわけです。

要旨以外の資料が残りにくい。

また企業は、研究成果の都合のいいところは公開しつつも、

その研究に関連するノウハウや特許が絡む知見の公開にはとても慎重です。

 

学術論文の場合、研究手法のところに詳細を書く必要があり、

レビュワーの指摘によっては

本当は書きたくない内容まで書かされてしまう可能性がでてきます。

(科学の普遍性という点で議論はいろいろありますが、)

不必要に情報を公開しないということに、企業はとてもセンシティブです。

 

一方学会発表では、

要旨こそ公開されますがそこまで詳細に書かないケースも多く、

また発表資料についても配布されることはないため、

情報が一般に広く公開されるリスクは論文よりも下がります。

 

しかし新型コロナウィルス拡大以降、学会もオンライン開催が増えました。

学会の視聴ルールに

「スクリーンショットや録画は控えるように」と書かれていますが、

おそらくこの点は性善説と推測され、

スライドを撮影されている可能性は十分に考えられます。

 

企業側がこのリスクを配慮しすぎて、

スライドに載せる情報の選択も慎重になったり、

場合によっては学会発表を敬遠したりするようになるのでは?

と私は気になっています。

 

商品やサービスをPRするための発表も混在してしまう。

企業は基本的に営利団体のため、

企業での研究は自社のモノやサービスを売るために行われます。

そのため、一定の研究成果が得られ、

その成果を公表することで自社にメリットが得られると判断されたときに、

初めて対外的な発表が検討されます。

 

発表する以上、ある程度注目を集めることが重要です。

企業によっては学会発表前に

A学会で発表します」というプレスリリースを流しておくケースもあります。

発表を通して自社に注目を集め、

ゆくゆくは自社商品やサービスの認知度拡大や販売促進につなげることが、

意図として見え隠れしています。

 

しかし学会という場である以上、

発表内容は科学的な背景や手順を踏んだものであるべきで、

企業側もその点をしっかり準備して発表するのが礼儀です。

 

ただ残念なことに、その会社の商品の優位性を際立たせることを優先し、

科学的側面での新しさや面白さ(場合によっては内容そのもの)が

ほとんどない発表が混ざっています。

 

「これは営業か?」という発表も稀に見かけます。

プレゼン時間の大半を自社商品の紹介や背景紹介に割き、

研究成果をほとんど話さない発表も見かけます。

 

企業の方針なのか発表者の不手際や暴走なのか分かりませんが、

「学会」という場であることをしっかりと理解し、

聞き手に何かしらの知見を与えられるような発表を準備してほしい

と私は思っています。

企業の発表でも、科学的な面白さや新しさをアピールしてほしい。

以上のように、

企業の学会発表は自社の認知度アップや販売促進を意識したものが多いです。

ただ個人的には、その中にも

科学的な面白さ、新しさ、研究に対するその人の情熱といったものを

発表の中にしっかりと盛り込んでほしいと思っています。

 

自社商品のメリットをアピールするという姿勢や

ポジションそのものを完全には否定しません。

しかし、学会は一般消費者向けに向けたアピールの場ではなく、

科学的知見を議論する場所です。

 

企業の研究者であっても、

研究の新規性や今後の道筋などを研究者たちと共有し、

さらなる発展につなげることを念頭において発表してほしいと思っています。

まとめ

・学会発表であれば、企業が主張したいことをそのまま発表できる。

・注目を集められる一方、商品やサービスをPRするための発表も混在してしまう。

・個人的には、 企業の発表でも、科学的な面白さや新しさをアピールしてほしい。

 

学会では学生も多く発表しています。

緊張しつつも自分の研究の新しさや面白さを伝えようと

一生懸命にプレゼンをしている学生の姿を見ると、

自分の研究を広く多くの人に知ってもらいたいという気持ちを

思い出させてくれます。

対外発表をする時は、この気持ちを思い出して臨むようにしたいと思います。

 

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この記事を書いた人

食品メーカー研究職。
修士卒→食品メーカー(この間、社会人博士取得)→2023年に研究職で転職。
専門は質量分析・オミクスを使った研究/発言は個人的見解です
Twitter:https://twitter.com/NzXyZQDOCMpLgz5

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