企業の研究テーマ:新規性だけでなくその先のゴールも意識したテーマ設定が求められる

研究職の仕事

学生時代も含めていわゆるアカデミア(大学、研究機関など)にそれなりの期間在籍していました。

私が所属してきたラボでは、学生や研究員ごとにテーマが割り当てられ、そのテーマを探求して新しいことを明らかにし、論文にしていくという流れが一般的でした。

そのテーマも「新しく何かを明らかにする」ことが軸になっており、これこそ研究の醍醐味でありアカデミアの使命です。

ところが、企業においてこの「新規性」だけを使命として研究している人の割合はかなり少ないです。むしろ別の部分にフォーカスして日々働いている方が圧倒的に多いです。

今回は、企業の研究:新規性だけでは不十分 というタイトルで、少なくとも私の周りの研究員がどのような考え方をもって研究をしているかを書いていきます。

企業の研究では、新規性・新発見以外にも大切なことがある

前提:研究テーマによって求められる要素は全然違う

当然、一つの研究所の中でも様々なテーマが設定されており、また進み具合も全然違います。

例として以下のようなものがあります。

①自社のヨーグルトに使用している乳酸菌には弱点がある。この弱点を克服できる新しい乳酸菌を見つけ、なぜ弱点が克服できるのか知見を得ておき、製法検討に活かしたい。

②自社のヨーグルトは製造ラインAで問題なく作れているが、売り上げ増加に備えて今のうちにラインBでも作れるようにしておきたい。しかしラインBの構造上同じ製法が取れないため、今までと同じ品質のものがラインBでも作れるように製法を組みなおしたい。

どちらも研究員の仕事ですが、ヨーグルトを扱う研究でも位置づけが違うことが分かると思います。

①は目指すところが「弱点を克服できる乳酸菌を見つけ、その特徴を明らかにする」ことであり、基礎研究寄りで、新しい発見をある程度期待されています。一方②は製法の改良であり、実用化に直結させる結果が求められており、新発見が求められているものではありません。

このように、テーマの位置づけや進捗次第で求められることは大きく変わってきます。

実用化を求める研究に「新発見」はあまり必要ない

私が所属している企業の研究員は、ほとんどが②のように実用化に近い部分を担当しています。この場面で期待されているのは、「持っているノウハウを駆使して、実用化に向けた課題を解決する」というもので、「何か新しいものを見つけてほしい」というケースはかなり少ないです。

実際のところは、この課題解決を通して新しい手法や処方が開発されると、これらを知財化をすることによって他社にまねされるのを防ぐことができます。ただし多くの場合「既存知見の組み合わせ」であり、新発見と呼ばれるような代物はごく少数です。

論文検索をすると、「化合物Aをこれまでと別の方法で全合成した」というような、いわゆる「one of them」の研究も見かけると思います。得てして研究の質があまり高くないという評価が付きがちです。(先生によってはこういう研究をすごく嫌がる人もいますね。)

しかし企業では、このような研究が企業の課題解決につながっており、実用性の高い意義のある研究として扱われます。この辺りは考え方の違いだと私は理解しています。

まとめ

課題解決や実用化に軸を置く研究では、「新規性」だけが求められているわけではない。

アカデミアと目指すところが違う以上、研究の進め方やその軸となる考え方も全然違いますね。

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